(「主題歌にみる昭和から平成の特撮ヒーローの変化」にデータ増補・khcoderによる再分析。焼き直しです。)
昭和30年代から現在まで、それぞれの時代に特撮ヒーローがいます。ヒーロー像は時代とともに変化してきました。また、ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊などシリーズごとの特徴もあります。本稿では、計量テキスト分析手法を用いて昭和33年(1958)から令和3年(2021)まで約60年のテレビの特撮ヒーローの主題歌210曲の歌詞を分析してみました。
この手法は定型化されていない文章データを単語やフレーズに分割し、統計的に解析することで隠れた情報を発見するものです。
分析イメージ(歌詞の年代別特徴:下で説明しています)
分析対象
昭和33年(1958)から令和3年(2021)までの210曲を対象としています。
どのようなテーマが含まれているかを概観する - 共起ネットワーク
単語の出現頻度と単語の結びつきを示します。
曲中に同時に出現する割合が高い単語を線で結びます。色分けされたグループにより、どのようなテーマが含まれているのか推察できます。「未来、夢、勇気、力」といった価値をうたうもの、「地球、平和、正義、守る」といった地球の番人的なもの、「自分、信じる、諦めない」と内面から鼓舞するものなどがみられます。空を飛ぶ、悪への怒り、涙と希望という組み合わせもみられました。
○の大きさは出現頻度を表しています。特撮ヒーローの主題歌では「行く」(「行け!」など)、「きみ」「心」などが良く使われていることがうかがえます。
時代別の特徴をみる - 対応分析・コレスポンデンス分析
時代ごとのヒーローのあり方を反映してか、主題歌に使われている言葉は年代別に偏りがあります。
図は、語の年代別の偏りを図で表現したものです。似たような出現傾向の語が原点から見て同一方向に付置されます。また、偏りの大きい語(特定の年代にしか出現しないなど)は原点から遠くに付置されます。原点から見て各年代の方向にある語はその年代に特徴的なもの、原点付近にあるものは年代を超えてまんべんなく使われているものです。
この図では、左上→中央下→右上と反時計回りにたどることで、時代による変化を把握することができます。
1950-60年代(左上)は「敵」「正義」「進む」など、1970年代(左)は「空」「飛ぶ」「平和」「嵐」「悪」などが特徴的です。空を飛び、力強く悪い敵を倒して正義と平和を守る父性的なヒーロー像がうかがえます。
70年代(左)から80年代(下)にかけては「宇宙」「地球」などがあり、活動範囲が広がったようです。また「燃える・燃やす」「炎」「戦士」「たたかう」など勇ましい戦士像が想起されます。
80年代(下)から90年代(右下)にかけては「愛」「勇気」「涙」「やさしい」「俺」など、熱い涙がほとばしる等身大の熱血ヒーロー像が浮かびます。
90年代から2000年代にかけては「きみ」「生きる」「心」「夢」「熱い」「パワー」などがみられます。戦いやヒーロー性だけに注目するのでなく人間の内面への関心が感じられます。
2000年代、2010年代以降はともに右上にあり、あまり変化がないようです。「運命」「自分」「信じる」「道」「希望」「変える」「あきらめる」「未来」など、「自分が信じた道をあきらめない」など、自己実現を応援する保護者や指導者のような目線を感じます。
これ以外にも様々な解釈ができると思いますが、特撮ヒーローの主題歌、つまりは特撮ヒーロー番組と子どもたちとの関係が時代とともに変化しているということがうかがえました。
シリーズの特徴 – クロス集計
ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊について、それぞれ昭和期と平成以降の特徴を見るためクロス集計してみました。
昭和ウルトラマンは8作品のうち7作品(87.5%)に「来る」、5作品(62.5%)に「星」「敵」、4作品(50%)に「地球」「輝く」の語が使われていました。敵を倒すために星からやって来る輝くヒーローというイメージでしょうか。ウルトラマンらしいと思いました。
昭和ライダーは「燃える・燃やす」(77.8%)「守る」「空」(66.7%)「正義」(55.6%)でした。(世界を)守るために燃える正義のヒーローです。
昭和スーパー戦隊は「燃える・燃やす」(83.3%)「勇気」「愛」「力」「星」(50.0%)で、愛と勇気の燃える熱血ヒーロです。
このように、それぞれのシリーズには特徴がありました。
平成以降は「信じる」「未来」「きみ」が上位にあるなど、全体的に時代の影響を受けてシリーズ間の差異は小さくなってきたように思います。しかし、スーパー戦隊については昭和期と同様に「勇気」「燃える・燃やす」が多用されており、燃えるヒーロー像が昭和から受け継がれているように見えます。