社会との良好な関係づくりを支援する調査、分析、コンサルティング

コレスポンデンス分析(対応分析)で割り切れない気持ちを含めて分析する

賛否とその理由を問う質問

ある事柄に対する賛否と理由をたずねるアンケート調査において、

Q1.○○に賛成ですか?
   1.はい  → SQ1へ
   2.いいえ → SQ2へ

SQ1.賛成の理由は?
SQ2.反対の理由は?

といった形式の設問がよく見られます。
この形式は、賛成→その理由 反対→その理由 と、結果がシンプルに把握できる利点があります。
しかし、今日的な課題には、そう単純に割り切れないものがあります。例えば、原子力発電所の賛否などによくある「不安だけど、エネルギーの安定供給のためしぶしぶ賛成」といったものです。上記の方法では、単にQ1は「賛成」、SQ1は「安定供給のため」となり、「不安」や「しぶしぶ」という、割り切れない気持ちが集計結果に現れません。

コレスポンデンス分析(対応分析)で割り切れない気持ちを含めて分析する

このような、割り切れない気持ちを含めて分析する場合、コレスポンデンス分析が役立ちます。
上記の例に替えて、次のように質問してみます。この例は、二酸化炭素の地中貯留(CCS)を利用すべきか否かと、その背景にある考えを問う設問です。

Q1.二酸化炭素の地中貯留(CCS)を利用すべきと思いますか(単一回答)
 1.そう思う 2.ややそう思う 3.どちらともいえない 4.あまりそう思わない 5.そう思わない

Q2.二酸化炭素の地中貯留(CCS)に対する意見・疑問(自由記述→複数回答)

Q2(この例では自由記述をアフターコーディングして複数回答の形式にしました)を、Q1の回答によりクロス集計し、その結果をコレスポンデンス分析したところ、下の図が得られました。

図.二酸化炭素の地中貯留(CCS)に対する賛否の理由

横軸は賛否、縦軸は考えの明確さを表していると解釈できます。
CCSに対する否定的な態度(「そう思わない」「あまりそう思わない」)に強く関連していたのは「CO₂削減の必要性に疑問」「貯留の妥当性・抜本的対策でない」といった意見であり「安全性・環境影響」「費用対効果」「実現可能性」等は、CCSに肯定または中庸の立場でも意見や疑問があるということがわかりました。

ここから;

  • CCSに反対の人の気持ちを動かすには、必要性や妥当性の理解が必要。
  • CCSに反対していない人にも安全性・環境影響,費用対効果、実現可能性等についての説明を疎かにすべきではない。

といったことが示唆されます。

一般的に、このような問題では「反対派が危険だと騒いでいる」から「安全だとアピールすればよい」といったことが議論されますが、そういうことではなさそうです。このように、コレスポンデンス分析を使えば、単純な賛否で割り切れない、アンビバレントな感情などの存在も把握できる可能性があります。

参考:温暖化緩和技術としてのCCSの印象とリスク認知 日本リスク研究学会第27回年次大会講演論文集Vol.27, Nov.29-30,2014

株式会社ペスコ 社会環境研究室 TEL 03-3435-9588

PAGETOP